氷点/三浦綾子

2017/12/25 06:57
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私は三浦綾子を絶賛する割には肝心の氷点を読んでいなかった件についに気付いてしまった。のでさっそく上下巻買ってきましたよ。

いや~すごい。
この本を書いている間に著者は何を思っていたのか計り知れない。こんなことを考えつくなんて人生にどれだけ達観しているのか。

文章自体は読みやすいのでサクサク進むのだが、人間の心の内のエグさに胸焼けがはんぱない。
大人って、ほんとみっともないな。
とにかく情けない。つまらないプライドのために復讐ばかり。
だけど誰も責められない。
この人の立場だったら私もそうする…とつい思ってしまう自体ばかり。

とにかく夏枝が嫌いなんだわ‼
母親になったのだからセコンドに収まればいいものを、とにかく自分がちやほやされてないと気がすまない。子供なんだなぁと呆れ返る。特に息子の友達に手を出したのは許せなかった。

そういう汚い陽子のまっすぐさは実に救いだった。彼女の前向きな考え方とひたむきで地道な生き方こそ人が参考にするべきなのだ。

ラストへの持っていきかたもまた。
とにかく考えさせ方がうまい。
考えなければ!生きているのだから必死で考えなければ!


ヨスガ難民は読んでおけ。ちょっと救われるぞ。
るもえブログはまだ続く。



物書同心居眠り紋蔵/佐藤雅美

2017/12/20 06:52
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久々に読んだがっつりした江戸物。
佐藤先生らしく捕物帖なのはテンションあがるのだが、佐藤先生らしく江戸の基礎がゴリゴリにできているので、意味の分からない単語や状態がしばしばw初心者にはむきません。だいたいこれシリーズの途中みたいだし(私は小説では巻とばしは気にしないで読んでしまうタイプです)佐藤雅美先生は江戸で暮らしていたことがあるのではなかろうか?

八丁堀で働く主人公のおっさん。
いつの時代も揉め事といえばだいたい金か女。変わらないのがほっとするやらなさけないやら。
スッキリ解決するよりも人情派というか、「これしかないか…」という気もけっこうします。

どっちかというと八丁堀の捕物帖よりも、主人公の妻子とともにする質素で堅実な江戸ぐらしのシーンの方が私は楽しい。
「油代がもったいないからもう寝る」
とかあると、電気代もったいないから早寝するのと全く一緒だし、当時は周囲にも灯なんてないから夜はほんとに真っ暗だったんだろうなぁと想像する。

お江戸はファンタジー。日本だけど。
るもえブログはまだ続く。



火花/又吉直樹

2017/12/08 06:43
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話題作だし、と軽い気持ちで読み始めたんだけど
夢中になってあっという間に読んでしまった。

非常に素晴らしい作品。

ここ数年では町田康、中村文昭に続く衝撃的な作家。
作品もここ数年で5本指に入る完成度の高い作品。
芥川賞取ったのも分かる。

とにかく特徴的なのはキャラクターの輪郭の濃さ。
主人公の徳永のお笑い芸人としての考え方や信念はもちろんだけど、徳永と深く関わることになる神谷さんという人物の独特さ。もう神谷さんが実際にいてこの人の伝記をそっくりそのまま書いているのかと思えるほど生命力が強い。芥川賞作品においてこういうキャラクターの強さが目立つ作品はかなり珍しい。

それなのに、ずっとはかない
破天荒なのにその様はずっと崖の上を歩いているよう。この繊細さは終始消えることがなかった。

文章力も少ない言葉で想像を掻き立てるように書いてくれているので非常に読みやすいのに密度が高い。読者を信頼してくれているのが伝わる。
芸人独特の上下関係や舞台裏は他の作家には書けまい。

芥川賞作品は結局途中で始まって途中で終わる物も多いけど、ラストへのまとめかたも美しく、でも切なく、でもどこかばからしく終わらせてくれた。
読み応えもあるとてもいい作品です。
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教団X/中村文則

2017/11/13 07:14
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話題作なので手にしてみたのですが、そもそも中村文則さん自体は私は読むのが初で、どんな方かと思って略歴を見てみると過去の受賞歴に
『大江健三郎賞を受賞』
とあった。この一文で推して知るべし。要するに大江健三郎賞を受賞できるタイプの作家です。

私としてはいささか相性が悪いのだが、
これがすごい作品なんだ。
「なんだこの内容は…」と思いながらも一気に読み進めてしまった。

タイトルの通り新興宗教が関係してくるんだけど
この先生、普段からこんなこと考えて生きてんのか?
大江健三郎を読んでてもこんなこと思う。

最初こそ不思議な感じで、後半大きく展開を見せるのだけど、
とにかく文章がうまい。
売れっ子作家のなかでも結構な人数が”文章力はいまいちだけどストーリーが抜群に面白い”のでもてはやされているが(貴志祐介とか)この先生は完全に逆で、ストーリーがどうこうよりも圧倒的な文章力で強烈な世界感を作っているとてもレアなケース。

普通本は読み終わった後達成感や虚無感などを味わうのだが、この作品は読み終わった後不思議な気持ちになった。見てはいけないものを見てしまったような、新しいことを知ったけど自分のためには一切ならない知識のような。

正直なところ全容は理解できていない。現状ではざっとストーリーを掴んだだけ。2周目になればもう少し作者の意図が読み解けるだろうし3周目にはもっと自分の血肉となるべく砕くことができるだろう。
だけどしばらく読みたくない(笑)世界感にあてられました。
るもえブログはまだ続く。



過ぎ去りし王国の城/宮部みゆき

2017/10/26 06:55
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時々出て来る宮部のファンタジックな部分ですね。小暮写眞館とか。

主人公の普通の男子中学生が手に入れた不思議な王国の絵。この絵に触れると絵の中に入ってしまう…

設定自体はシンプルだけど、やはりキャラクターとストーリー構成がいい。
「おぉっ」と思わず言ってしまうような展開があるし、後半は殺人事件は起きないけどかなり深刻な事件も入り組んできて、これはどこにに着地するのか、綺麗に終わるのかと心配してしまいますが、それはいつもの宮部テクニックでなるほどこんな終わりがあったかとうなるほど綺麗にまとまる。

特に一つの事件に対して、それぞれの立場が違うから向き合い方も違うという状況は読んでる方としては納得するが書き手としてはなかなか考え付けれない部分かと思います。こういうところの演出が引き込まれる。
この作品はアニメにすると面白いんじゃないかなぁ。


もう一つの見どころとして推したいのは、表紙。
これ黒板にチョークで書かれた絵柄を写真に撮ったもの。チョークアートとでもいうのか、ネット界隈では有名な若いアーティストさんの作品ですね。テレビで特集されたのを偶然見たことがあります。この本を手に取ったのも「あ、これか~」と思ったから。
この表紙があったからこそ古城のデッサンの映像がより刻銘に脳裏に浮かび助かりました。
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