ホテルローヤル

2017/04/12 07:03
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何気に手に取っただけだったので直木賞受賞作と帯で知る。そういやこんなタイトルのもあったな。

7本の短いヒューマンドラマが入っているのですが、その全てがラブホテル「ローヤル」に関係するもの。舞台とは言い難い。なぜなら
ホテルローヤルはすでに潰れいてるから。
この設定にはちょっとびっくりした。すでに廃墟になったラブホテルで一体どうやって話を展開するのか?と思ってたんだけど、なるほど作家先生は色々と考えつくものですね。
唯一『せんせぇ』という作品だけが明確にホテルローヤルと記されていないのだけれど、話の流れから行くとこの2人は当然…

『本日開店』とか『星をみていた』もかなり好きですが、一番最後に収録されてる『ギフト』これがすごい!
それまでは「面白くないこともないけど直木賞とるほどかなぁ?」と思ってたんだけど、この最後の一本で「なるほどこれは取るわ!」という意見に手のひら買えさせてもらった。これだけもう一度読み返そう。

娘がバカな男に入れ込んでしまったら、父親はもうどうしようもできないですよね。無理に別れさせようとしたらますます2人をドラマチックな錯覚に溺れさせるだけで。
「いつからこんな芝居じみた女になったんだろうって情けなくて泣きたくなった。
幸せにするなんて無責任な言葉どこで覚えたの。
幸せなんて過去形で語ってなんぼじゃないの」(一部)
というセリフには人の家庭のことなのにズシンと来たなぁ。

文章自体は密度も読み応えも低いのでかなり読みやすいけれど、設定はかなり興味深いものが多かった。
「いい作品だ!」とはまた違うニュアンスで面白い作品だった。
るもえブログはまだ続く。



チッチと子/石田衣良

2017/04/04 07:05
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4年前に読んだときに大変感銘を受けたし、石田衣良を初めて面白いと思えた作品なので、文庫で買い直してきました。
そして改めて読んでもやっぱりいい作品。

初回は主人公であるチッチの心理描写にやはり重点を置いていましたが(自分で自分のブログを読んだ)、今回はゆったりと、だけど確実に流れていく時間の中にカケルのチッチへの愛情と心配をすごく感じられた。

世の中には親子関係を主従関係(親が主)と勘違いしている人が多い気がしますが、実際には対等な関係であると私は思うのです。だって親だって親になるのは初めてなんだから(とかいうと、「いやうちは二人目だし」と屁理屈をいう人がいますが、”二人目の親””三人目の親”になるのは初めてなわけで、一人目の親と二人目の親、一人っ子の親と2人兄弟の親はやはり感覚が違うと思うのです)
子供は社会経験が少ないから知識が不足しているのは当然で、そこは手助けするのは当たりまでであって(これは相手が赤の他人の大人であっても手助けするのが人間として普通だと思う)、基本的には一緒に生活を成り立たせる協力者、それが家族であり親子だと思う。だって子供がいい子でいようとすることは子供本人の努力なのだから、子供にも苦労や気遣いがあることを忘れてはいけない。

ママッチがなくなっていることもあって普通の子よりもさらに負荷がかかっているカケル、そういう子に愚痴を言ったり泣き言を言ったりするチッチって私は好きです。
素直に子供を頼っているし、頼られているって子供も嬉しいものです。

私は今のところ心身共に親しい人を亡くしたことが一度もない。両親も健在だし。祖父母はまた立場が違うと思うので(おじいちゃん子、おばあちゃん子の人はまた別です)
だから奥さんを亡くしたチッチの
「あまりに申告なショックは軽い」
「忘れられないのではなく相手が忘れさせてくれない」
という気持ちは、おそらくこれが正しいのだろうなぁと感じた。
作品中でも死んだ妻の母(チッチにとっては義母、カケルのおばあちゃん)が「いつまでも死んだ娘にとらわれないで」とか「昔は忘れて前に進んで」とかドラマでありそうなセリフを言いますが、そういうことじゃなくて、生きてようが死んでようが妻は妻みたいな感覚を垣間見てなるほどと思った。実際別に操を立てるとか、子供に遠慮するとかそんな殊勝な事ではないんだろうなぁ。

大人の恋愛模様も好きです。怖がっているわけではないが焦る必要もないのでこれといって進まない、大人同士の話ですね。
日常系に見せかけて終盤にはきちんとしたクライマックスがあるところも読み応えがあります。素晴らしい作品です。
るもえブログはまだ続く。



あなたの人生、片付けます/垣谷美雨

2017/03/21 07:02
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なんとな~く読み始めた本だったんだけど、これが結構面白かった。

タイトルでも分かる通り、"片付け屋"のおばさんが各家庭を訪問。4本話が入っていてうち3本は客の主観。なので片付け屋のおばさんをいぶかしんでいる。

世の中には結構「掃除の仕方」だの「収納の仕方」だのといったノウハウというよりも小技にみせかけて余計部屋をめんどくさくする方法をアドバイスする本が溢れているが、この小説では片付けの具体的な仕方はほとんど語られていない(How to本じゃなくて小説だしね)
むしろなぜ片付けられていないのか、家主の心理を追求する。これが面白い。

実際ね、「私は散らかってる方が好きなんです、物に囲まれてる方が幸せなんです」というタイプを除けば、部屋が汚いことに不便や負い目を感じているのに片付けたくても片付けられないというのは、やはり心のどこかに負荷がかかっているんだと思いますよ。そこを紐解く掃除屋のおばさんが容赦ない。
カウンセラーのように優しく聞き出すのではなく、わりとずかずか部屋にも心にも入ってくる。家主が気にしてるであろうことを露骨に顔に出す。これはこれで親切の一種にも見える。

特に面白かったのは物が捨てられないおばあさんの話。
戦後の物がない時代を切り抜けた人が、ものを捨てられないっていう話は結構多い。もう二度と着ない服も、絶対に使わない布団も、賞味期限が切れた食品も捨てられない。"いつか困ったときに使うから"といって保存する。そして"安いから"という理由でまた買ってくる。
気持ちはわからなくもないですけどね。
でもこういう人はいざ使う場面になるとまた新たに買ってくるんですよ。

単純に物を捨てたり掃除したりしてもすぐにリバウンドする。まずは根本にある"なぜ片付けられないか"に注目したのは面白かった。
もっとシリーズにしてドラマになったら面白い。
るもえブログはまだ続く。



ジョーカー・ゲーム

2017/03/17 07:07
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昨年アニメでダダハマりしたジョーカー・ゲームの原作本。文庫になってたのでちょっと買ってみた。フフ。

読んで分かるのは
アニメがかなり原作に忠実であるということ
尺があるので若干端折ってるところもあるし、小説がすげー密度濃いので説明しきれてない部分もあるけれど、読んでるとアニメのシーンがハッキリ脳裏にでてきて。
というか、アニメ見てなかったら難しすぎてこんなにはっきり読んだ手応えが出なかったかも。
戦時中の日本兵のあり方と反比例するスパイのあり方とか想像もしたこと無いからなぁ。

スパイ養成機関とか素敵過ぎる。
その一方でスパイの人のスペックが高すぎる。ある意味では自己能力の過信がすぎて、ドン引き。しかし私だったら即刻バレて拷問に掛けられてるなぁってゆーかD機関の試験に呼ばれることさえ無いよ!
こうして本で客観視すると会ったこともない赤の他人に敬礼して命をなげうっている日本兵がかなり洗脳されてて気色悪いんだけど、現実にこの状況になると冷静に客観視してるD機関の方がどうかしてる気もする。

しかしこうして本をじっくり読むと
結城中佐のすごさが実感
アニメはやはりその時の主人公に注目しがちだし、ついつい佐久間さんを可愛がりがち(笑)だけど、事件の全貌の全てに暗躍しているのがわかってゾットする。人間業じゃない。

この文庫版あと何冊か出てるみたいなので、気が向いたらまた買います。
るもえブログはまだ続く。



スーツアクター探偵の事件簿/大倉崇裕

2017/03/07 07:00
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初めて読む作家。かる~~~い読み物です。小説のスタイルは取ってますが文章も表現方法もゆるいので読み応えはラノベのほうがあるかも。
内容も基本的にタイトル通り。
一応事件は起きるんだけど(殺人事件は起きない)、事件も解決も意外性は特に無い。だからある意味安心してぬるっと読めるんだけど。

特筆したいのはやはり
スーツアクターという仕事である件。
これもなかなか裏側が見れない職業なので、撮影の様子なんかは興味深かったです。
スーツアクターを目指していた主人公が事故にあってスーツを着れなくなってしまうという事情などもなるほど確かにと考えさせられた。
ストーリーに派手さもなくて、キャラクターも没個性ではあったけど、特撮の撮影シーンはやはり見どころだと思うので、深夜の30分ドラマにしたらかなりいいと思う。

太田くんはかわいいんだけど、後もうひと押し活躍してほしかった。
るもえブログはまだ続く。



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