ひつじが丘/三浦綾子

2016/12/09 07:01
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久しぶりの三浦綾子。
この作品も人間性が濃い~~~~です。恐ろしいほどの迷いと弱さ。
時代背景ははっきりとか記されてないですが日常生活に着物と洋服が混在する時代あたりみたいで(私の祖母くらいの世代なのかなぁ)、最初こそミッション系女子校でスタートしているので百合感にわくわくっちゃったんですがそんな甘酸っぱい訳はなく。作中に出て来る『パンパン屋』ってのがなんだかわからなくてねー調べちゃったよ。当時の風俗店みたいですね。

基本的な登場人物は5人。女が3人、男が2人。
奈緒美…牧師の一人娘。大人びた美人な一方男女の事に関してはまだ未成熟で興味を持てない一面がある。
京子…転校生の奈緒美と友だちになる。教師の竹山を密かにしかしはっきりと慕っている。
杉原…京子の兄。社交的で一目惚れした奈緒美に積極的にアプローチする反面、酒癖女癖が悪い。
竹山…生徒の奈緒美に密かに思いを寄せるが、友人の杉原に先手を取られ行動を起こしにくなっている。
輝子…勝ち気で躍進的な考えを持つ娘。ある事情で京子に辛くあたるが、杉原と運命的な出会いをする。

まー男と女がいたら、混戦しますよ。
その上でさらに三浦綾子節ですから。昼ドラ並にエグいことばかりがおきて。「こうはなってほしくないな」と思う方向にばかり展開が進んで、読み手のこちらもすっかり人生に疲れてしまった…
女は強いが浅はかで、
男は弱くて逃げ道は多い。

この人の作品は徹底して人間の弱さを追求させられるなー。
私は独身なので結婚のことについて偉そうに語れる立場じゃないですが、個人的には子供がいない夫婦であればお互い負担に思いながら一緒にいるくらいなら離婚したほうがいいと考えている人間なわけなのですが、
『人間は過ちを犯さずに生きていけない存在なんだよ』
『わたしだって、いつ、どうなるかわからないのだわ』
という劇中の言葉には本当に考えさせられた。結局のところ、自分も罪を犯したときに許して欲しいからあなたを許さなければいけない、真理であり一方で虚無的であるととても感じた。

人生のおいしいとこどりは、やっぱり出来ないのかな。
るもえブログはまだ続く。



ミッキーマウスの憂鬱/松岡圭祐

2016/11/25 07:01
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昨日の内容を踏まえた上で、久々に、そりゃもう10年以上ぶりに松岡圭祐小説を読んでみるかと思って、そこに飛び込んできたのがこのタイトル。
読んでみようじゃないかと。ディズニーランドの裏側を書くような本というのは実はちょこちょこ存在しているのだが、私はそういったものはずっと避けてきた。理由はもちろん、ディズニーランドのおいしいところだけを頂戴したいから。
おいしいとこ食いの一体何が悪いの!?悪がはびこり正直者が騙されて善意で行動することが何一つないこの世の中で、悪が正義に打ち勝つのはディズニーの世界だけだもの!お膳立てでもそれを味わったっていいだろう!
とまぁその原理は未だに変わらないのですが、私も大人になりました(←35)。表と裏をちゃんと理解できるし、裏を知った上でも表を楽しめる人間であろうと、まぁそう思ったのです。

一応フィクション形式ですが
かなりあけすけでどぎついことが書いてあります。
書きませんけどね。ネタバレじゃなくて、ディズニー好きの夢をがっつり壊すので。

ディズニーランドに期待と憧れを持って入ってきた派遣の主人公。こいつがほんとクズで。いや社員とか準社とかそういうこと関係なしになぜ初日から重要な仕事をやれると思っているのか。入社して3ヶ月は「はい」「すいません」の2文字だけでよろしい!マジでむかつきました。
そこに浴びせられる
「ここは夢の国じゃない!会社だ!」
にはいささかスッキリしたもんです。

でもクライマックスの活躍がとてもよくて!ちょっと涙ぐみそうになるくらいよくて。
キャラクターとしては久川さんという人が好きです。優秀で努力家で、なかなか自分の理想にはいかないからずっと耐えてて。ずっと怖い人だと思ってたけど最後のシーンはかっこよすぎて腰が抜ける。


こういうのは得てしてオリエンタルランドの体制批判なんかになりそうなもんだけど、この作者は相当調べたなということは伝わってとても良かった。アトラクション名やキャラクター名がきっちり正確だったので感心した。パーク好きは頭のなかにキレイに地図が出来上がります。
実写にしたら面白いだろうなぁと思いつつ絶対無理。
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パンク侍、斬られて候/町田康

2016/11/22 07:05
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絶賛中の町田康先生ですが、本来町田作品はこれが一番有名(なはず)なのに読むの遅くなりましてー。

基本的にはタイトル通り
最初っから最後までほぼほぼ文章がふざけてる。
時代考証がいつだか全くわからないし、侍とかいて江戸時代っぽく感じるけどハンバーグやクロックムッシュを食べていて、パソコンだのバンドだのと会話をするし、文章も普通に現代風。
主人公は確かにパンクな侍なんだけど、すげーむちゃくちゃですげー勝手で。でもものすごい強い。パンクってこういうこと?
町田康先生って10年以上前からこんな感じだったのね…
まぁこの辺は深く考えずに世界観を楽しむところ。

そのすごいふざけている中に考えさせられることが山ほどあって、文章力が高いので心にズシンとくる。ふざけた世界観に辛辣な現実がビシバシ伝わる。
どんなストーリーを書くかは大して問題ではない。作品を通して何を伝えるかが作家にとっては大事。
とこれは北方謙三の言葉だが、まさにその通り。
おかしな世界にはびこおる「腹ふり党」というおかしな新興宗教、暴徒と化す信者たち、よく出汁が出ているくびに汁。
キャラクターも人間のみじめで弱くてみっともない部分が全面に出ていて、情けないやら身につまされるやら。

今まで読んだ町田作品はストーリーめちゃめちゃおもしろいのにラストのまとめが比較的さらっとしてて「わ、あれだけやらかしておいてさらっと終わったww」ってのがほとんどだったんだけど、この作品だけは
ラストがすごい。
ラストがすごいからこそ、出だしがあれだったのかとまた巻き戻る。この作品も2周目からが本番だな。また読もう。


ちなみに「表紙のこの人一体誰?どこのモデル??」と思って調べたら
町田康本人だったわ
パンク。
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我が家の問題/奥田英朗

2016/10/25 07:04
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短編集。私は長編小説が好きで短編は嫌厭しがちなんですが、奥田先生だし、と信用して読みました。
信用してよかった。
とてもいい作品です。6編入ってますがどれもちゃんと面白かった!奥田先生のキャラクターは人格に芯があるのですが、短編でも手を抜くことなくしっかりしているので、短編なのにひとつひとつにしっかり読み応えがあるという素晴らしさ。ヘボい作家だったらこの設定とキャラクターだけで1作品つくってるところを、短編に惜しげもなく使う才能が素晴らしい。

特に気になったいくつかの感想を。
『ハズバンド』
これはこの作品の中では多分一番シリアス。短編なのでそれほど重く書いてるわけではないんだけど、解釈の仕方は色々ある気がする。この夫婦がこれから良好な関係になるのか、しかし結局別れてしまうのか可能性は五分五分な気がする。

 『夫とUFO』
人生にはいろんなことがあるといえど、例えば貧困とか浮気とか協力や話し合いで乗り切れることは想定していても夫が「UFOを見るんだ。毎日遭遇してる」と真面目に言ってくるということは普通想定しない。どうしますか?どうしよう。
私はワクワクと不安になりながらこの奥さんはどう受け止めどう解決するのかと思ってたんだけど、なんだか微笑ましい方向にいったのでホッとしました。

『妻とマラソン』
この話大好き!!単に夫婦の話ということではなくて、奥さんの気持ちや取り巻く環境というものに非常に興味深さと理解を持てたし、終始一貫素敵な話だった。この話を長編でもっと長くもっといろんな側面を読みたい!
ただ、主役が小説家(しかもN木賞受賞作家)ということで奥田先生のプライベートでは?と勘ぐらずにはいられない(笑)

やっぱり奥田先生は信用できるな。
信じて救われたという世にも珍しいパターン。
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今春屋ゴメス/西條奈加

2016/10/07 07:05
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「こんぱるやゴメス」と読みます。初めての作家さんなので調べてみたらこれがデビュー作(2005年)でその後はいくつか書かれてるみたいで。

とにかく設定が良い
時代は近未来なんだけど、その近未来東京の中に隔離された江戸という地域があって、この中は完全に江戸時代の生活をしている。鎖国しているので行ったり来たりは自由にはできないが、高い競争率をくじでかいくぐれば入国可能。ただし、江戸出身者以外は一度江戸を出ると二度と再訪問はできない。
もうこの設定だけで面白い。

もちろんここに更に主人公の事情とか出生の秘密とかお江戸の生活事情とかが関わってくるわけで。
キャラクターもドタバタしてていいですが、スト-リーはちゃんとしています。重たいというほどでもなくてちょうどよい。

楽しかったー
文章自体はすごく上手というほどでもないんだけど読みにくさもないので(上の下ってとこでしょうか)楽しく読めました。結構前の作品っていうのが少し残念。アレンジすればシリーズとしてもかなり可能性があるなと思った。
これ2時間スペシャルドラマとかにしたらかなり面白そうなのに。
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